夢日記

自分用

061

父親に似た人物と、知らない小さな男の子と一緒に、寂れた線路の上を歩いている。
この線路は終点の先にあるため電車が来ず、人の立ち入りが許可されている。

父親に似た人物は、体型や髪などは父親のものだったが、顔はエンボス加工をかけたようにブレておりよく分からなかった。
雰囲気は母方の祖父に似ていた。手を後ろで組んでゆっくりと歩き、表情はよく読めないが柔らかな物腰で話す。
そのせいか、夢の中の私はその人物が見知らぬ人だと分かってはいたものの、気付かぬふりをして娘や孫のような態度で接していた。
小さな男の子はほとんど話さず、父親に似た人物のベルトを後ろから掴んで律儀についていくのみだった。
この子を差し置いて私ばかり庇護対象ぶっている事を恥ずかしく感じたが、その事にもまた気付かぬふりをしていた。



私達は広いトンネルに入った。
向こうから異様に赤錆びた電車が走って来るのが見える。
私と男の子はただ壁に寄ったが、父親に似た人物は突然、そこにあった同じく赤錆びた鉄骨の影に勢い良く伏せて隠れた。

電車が通り過ぎていく。
電車らしい車両は最初の一両だけで、あとは焼け落ちた骨組みのようなものを二台引きずっているのみだった。
何の音もしない。

電車が遠ざかると父親に似た人物は、いやいや〜等とにこやかに言いながら何事も無かったかのように緩慢に立ち上がった。
「敵襲?」と冗談のつもりで言うと、父親に似た人物は「「テキシュウ」って言うんだねえ」と妙なイントネーションで繰り返した。
それから、うわごとのように「空襲、災害、テキシュウ、土砂崩れ、コールタール」と呟いた。
「どういう意味?」と聞いたが、「若い子は知らないんだねえ」と相変わらず柔らかな口調で、よく分からない事を言う。

父親に似た人物は話しながら、いたずらに足で地面を均している。
私も何とは無しに地面を見る。
そして、もうとっくに線路は途切れていたという事に気付いた。それに、どのみちここは終点より先だから、本来なら電車は来ないはずだ。
父親に似た人物にその違和感について伝えようか迷ったが、彼はまだ不明瞭な事を呟き続けている。
私はまた気付かぬふりをした。



見上げると壁や天井一面に、原色のペンキで目のたくさんついた怪物のようなラクガキがされている。
そこは狭いトンネルに変わっていた。
夢の中の私はこの場所に来たことがあるようだ。
「あ、ここ好きなんだよねー」等と言いながらトンネル内をスマートフォンで撮影した。
父親に似た人物は「そうなの」と和やかに頷きながら、トンネルの外で立ち止まって私を待ってくれている。
その隣にいた男の子が、おもむろにこちらを指さした。

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振り返ると、私の背後はトンネルではなく古い鉄の階段の裏側になっていた。その一段一段の裏に大量の目と口がびっしりと描かれている。
それをすり抜けて、若い男性とその娘と息子らしき一家が楽しげに話しながら歩いてきた。全員が華やかな浴衣を着ており、先程の電車と同じく何の音もしなかった。
避ける間も無く、一家は私をもすり抜けていく。