母親が死んだ。
部屋で座っていると、父親が悲しいのか苛立っているのか分からな
私は数日の間仕事もせず寝食もせず、その音だけを聞いている
父親はリモートワークで毎日のように会議をしており、会議が上手
極めていつも通りだ。誰も母親が死んだ事など意に介していないよ
私は自分と母親の傘だけを持って外に出た。
母親に関する嫌な記憶がこの期に及んで蘇るので自己嫌悪に陥って
マンションを出る時、頭の代わりに黒い傘の生えた小太りのスーツ
おじさん傘は私を振り返り、妙なイントネーションで「亡くなッた
私はそれを無視して行く。小雨が降っている。おじさん傘が背後遠
私は傘を差さずに歩き出す。
自分でもどこに行こうとしているのか分かっていなかったが、おじ
私は後追い自殺をする人の心理はあまり理解できない方だったが、
後追いとはこういう事なんだ、
父親や友人、自分の事などが全て頭から抜け落ちていた。
後追い自殺について考えながら黙々と歩いていると、いつからか家
適当に右へ曲がると、また近所の細道に似た場所へ入ったが、少し
異様に真っ赤で大きなツツジの花が、道沿いの植え込みを埋め尽く
歩き続けるとたまに十字路のような場所に出る。
細道から、5メートル程の背丈があり喪服のようなワンピースを着
小学生は首から上を激しく痙攣させながら歩いていった。巨大な木
私は小学生の後ろ姿を見送ると、十字路の真ん中に立って辺りを見
人の気配がまるで無い。
ここからは気兼ねなく泣きながら歩く事ができるだろう。