私は自宅のリビングで祖母と話している。
電気は点いていないが、壁が一面丸ごとガラスになっている我が家
祖母はなぜか私の自宅の室内のプランターで野菜を育てており、そ
紫色の芋のようだがさつまいもではなく、一つ一つがてんでバラバ
ザラメのような物が付いており、日光を反射してきらきらと光って
私は以前にもその植物の説明をされた事があり、それをもらって食
あまり良くないかもしれないが、私はこうしているのが好きなのだ
祖母はとても嬉しそうに話をしてくれる。
私はよく分からない学校に通っているらしい。
雪山の小さな村に遠足に来たようだ。
私は、その村の外れにもう一つ、無人の村があるという噂を知って
私はそういった不気味な話は好きなので、隙を見て抜け出してその
吹雪のような勢いの雪で視界が悪いが、私はなぜかそれに邪魔をさ
滑るように高速で移動している。私の歩幅と歩くスピードは合って
適当に歩いていると突然目の前に、高さ3メートルほどはある木の
何かを囲んでいるようだ。外周を回ると、一箇所だけ杭の壁を切り
おそらくこれが入り口だろう。私は当たり前の様にその鉄格子をす
そこが噂の無人の村だった。
村とは言うが、公園の様な規模感であり建物らしき建物も見当たら
ただ、雪でできた四角い建造物や、たくさんの妙な
私はそのかまくらを見た瞬間、見てはいけないものを見てしまった
そこから何かが出てくる事を察知して咄嗟に真下を向いた。視界の
場面が変わり、私は駅のホームで椅子に座っている。友人も一緒だ
私は友人にその村のことを話していた。
とても怖い思いをした事を伝えていたが、話しているうちに客観的
そう気付くと無性に、またあの場所に行ってみたくなった。あの黒
「でもあの、たくさんのかまくらが全部同じ方向いてるっていうの
確かにそうだ。なぜ写真を撮ろうと思わなかったのだろう。
私はかまくらやあの黒い物を写真に収める為に、再びあの村へ向か
私はまた吹雪の中を滑るように歩いている。
駅にいた時のままの服装だ。スモックブラウスを着ており雪山に登
ここまでどうやって来たのかは覚えていない。気が付くとまた、目
再び外周を回り、鉄格子をすり抜けて侵入する。
すぐにあのかまくらが視界に入った。
また、見てはいけないものを見たと強く感じた。加えて、無音だっ
私はまた咄嗟に真下を向いた。そしてスマホをポケットから取り出
遠くで足音が聞こえたかと思うと、突然それは物凄い勢いでこちら
そして間近まで来てぴたりと止まった。
私はしばらく固まっていたが、ふと我に返ってスマホを持った腕を
足音は追いかけてこなかった。
私はまた駅にいる。
どうやって帰って来たのか分からない。
録画した動画もやはり見てはいけないと感じた。
私は結局その動画を自分で見る事はなく、しかしせっかく撮って来たから
キャプションや題名は付けていない。
見てはいけないと感じていたので、この動画も誰にも見られずにこのまま埋もれて忘
私は地下鉄に乗っている。
あの村に行った日から、文字通り地に足がついていない気がする。
私の歩幅と歩くスピードはずれたままだった。
私はずっとあの日のスモックブラウスを着たままで、化粧や髪型も
家にも帰っていないような気がする。
変わった事と言えば、常に片手に中身のない猫を抱えて歩くように
家に帰れないのでこれを飼い猫の代わりにしているらしい。
私の投稿した動画はたくさんの人に見られていた。その動
私はそれを信じていなかったが、未だにその動画を自分で見る気に
駅に着き、目の前の座席が空いたので座る。
私が持ち歩く中身のない猫というのはつまり、内臓や骨を全て抜き
私の事を認識しつつも見えていないようだった。
座ってぼうっとしていると急に虚しくなった。
全てがどうでも良くなり、あれだけ躊躇っていたあの動画の視聴を
私のスマホの動画フォルダには未だあの動画が残っている。私はそ
例のかまくら群が映る。その中の一つから、やはり黒い大きな何か
それは上半身の異様に発達した、毛むくじゃらの生き物だった。コ
生き物はゆっくりとかまくらから顔を出してこちらを真っ直ぐに見
そして首を伸ばしてスマホに顔をうんと近付けると微動だにしなく
目が奇妙なほどに彩度の高い金色をしている。
しばらくそうしていたが、撮影していた私が逃げ出したので動画は
私は呆気に取られていた。
こんな物が映っていたなんて。早速友人に教えようと思った。
ふと顔を上げると、同じ車両に乗っていた全ての人達が私のスマホ
人々は落ちたスマホを尚も覗き込んでいる。電車の揺れに沿って床
滑稽なほどに足並みが揃っている。
私は猫の生皮を抱き締めて席を立つと、人々から距離を取った。
電車が止まり扉が開く。と同時に、人々は突然我先にと車両の外へ
そして向かいのホームに駆け寄り、並んで立つ。
尋常な様子ではない。私はスマホを拾い上げると急いで人々の後を
この人たちは自殺しようとしている。
あの金色が良くない光だったのだと思う。
私が平気だったのはきっと、私が既にこの世のものではなくなって
人々にその事を伝えようと必死に叫んで回ったが、今更伝えたとこ
そろそろ電車が来てしまう。どうしよう?