彩度の低く霧の深い場所にいる。
辺りは真っ平らな白灰色の平原で、河原の石のようなものとわざと
私と、私より幼い何かの気配はそこに突っ立って景色を眺めている
私は隣に立つ幼い気配に話しかけているが、自分が何を言っている
自我が朦朧としてくる。
しばらくすると、3Dゲームでの読み込み時のようにさらに遠くの
幼い気配はそこに行きたがった。
私はそれを了承して歩き出す。
その直後、私は幼い気配と入れ替わった。幼い私は父親の腕に座る
自分で歩かなくてもよい心地よさと安心感のようなものがある。
冷たくない粉雪が降っている。
平原は最初こそ真っ平らで何もなかったが、歩いていると霧の奥か
バケツを被った雪だるまの群れが数体、ゆるやかに跳ねるようにし
私は子どもらしくそれらの全てを指差しては「〇〇があるよ」「〇
父親はその度に「ほんとだ」「そうだね」と短く相槌を打ち、少し
自然物しかない景色が続く中、ふと右の方に街灯が見えた。
目を凝らすと霧と粉雪の向こう側にとても幅の広い白い石階段があ
突如現れた人工物に興味を惹かれる。父親は私が何かを言う前に無
住宅の内の一つから住民が出てきて、こちらへ挨拶をしてくれた。
それ以外には誰もいない。
漠然とこの世界が今日中に終わるような予感がした。
父親に「たぶん、今日で世界が終わっちゃうよ」と言うと父親はや
家々の間を抜けていくと真っ黒な海が見える。
私は海が好きだが、この時はなんとなく嫌な予感がしてそちらに行
いつの間にか父親とはぐれており、先程挨拶をしてくれた住人が私
「どこに行っちゃったかと思ったよ」「戻っておいで」と言うが、
住人に連れられ、父親が居ると言う住人の自宅へ入る。
その家は外観はごく普通の一軒家だったが、入ってみるとその中は
父親は居間らしき部屋で正座をしている。父親に話しかけようとす
ほらね!と住人の方を振り返るが、既に住人は居なくなっていた。
いつの間にか粉雪は止み、霧も晴れている。私は先程見えた海へ行
海は真っ黒で、砂浜は灰色をしている。
空も灰色に澱んでおり太陽が見えない。
砂浜より手前には砂浜に沿うようにして二十段程度の広い石階段が
私もそこに座ってしばらく海を眺めていた。
しばらくして、ふと海の様子がおかしくなってきた事に気付いた。
引き潮が起こっている。目を凝らすと地平線から津波が迫っている
階段に座っている人々は動く気配がない。幼い私は必死に「津波だ
私は父親のことを思い出して階段を駆け上がる。
死ぬとしても父親と一緒にいればまだ怖くないような気がした。