夢日記

自分用

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廃ビルの一室に置かれた机を、見知らぬ中年の男女とスーツ姿の男と一緒に囲んで座っている。

見知らぬ男女は私の両親であるようだ。

一つ向こうの部屋には、椅子に縛り付けられた金髪の若い女性が見える。気絶しているのか微動だにしない。

金髪の女性は私の姉らしい。

 

スーツ姿の男は私たちに「サービス」の説明をしている。

聞いているとどうやら働かずに遊び歩いている姉にストレスを募らせた偽の両親が、「特定の人に暴力を振るって殺害するフェイク動画」を制作するサービスを利用したらしい。

姉を差し出してもらったのは3Dスキャンの為だった、スキャンは終わったからもう帰宅させてもよい、というような事をスーツが説明している。

偽の両親は真面目に話を聞いているが、私はこれらを不可解に思いほとんど疑っている。



スーツは「彼女は服用させた薬の関係でしばらく目を覚まさないので、その間は彼女を隔離していただいて、そこでこの薬品を専用器具で炙っていただいて」と忙しなく喋ると、白い粘土のようなものが詰まった袋を机に置いた。

「すると発煙しますので、その煙で部屋を満たしていただいて そうすれば意識の回復、その後の記憶処理等が飛躍的に簡単になりますので」

スーツは頻出する「ので」「いただいて」の度に喋りを減速させ、どうぞの形で右手の平を上に向ける。

私はなぜかその言動に内心ひどく苛立っている。



スーツは粘土を開封し、炙る様子を実演した。

姉のいる一つ向こうの部屋にはたちまち煙が充満し、スーツはその部屋の扉を閉めた。

あれでは姉は息ができなくなるのではないだろうか、と考えると瞬く間に「粘土が開封されてしまったが、保存するための袋などが無い」「本当にまだ彼女は生きているのか」「フェイクとはいえ娘のスナッフフィルムを欲するこの偽の両親は危険ではないか」等と様々な違和感や疑問が浮かんでくる。




話を切り出すべきか、どう切り出そうか迷っていると、突然背後に父方の祖母が現れた。

「こっそり、こっそり」と口に出しながら忍び足で近づいて来ている。

祖母は刃先の鋭い金色のハサミを持っている。

私に気付かれた事を悟ったのか祖母はそのハサミを逆手に持って振り上げた。

私が刺されるのかと思いきや、祖母はそれを祖母自身の胸に突き立てた。

思わず「何してんの!?」と叫び祖母に飛び付く。

 

服の胸元に血が滲んでいるが、その量は思ったよりも遥かに少なかった。

祖母は「痛いじゃないのよ〜!」と祖母自身の頭を軽くはたき、「私ったら不器用でだめねぇ」とやたらと楽しげに笑っている。

机の方から「えー、ドッキリ大成功。」と平坦な調子の父親の声が聞こえた。

見ると先ほどまでの偽の両親ではなく、本当の私の両親が机の向こう側に並んで立っている。スーツはいつの間にか居なくなっていた

母親は関心が無さそうな無表情をしていたが、私と目が合うとよかったね、といったふうに首を傾げて笑顔を作った。

父親に「どこからどこまでがドッキリなの?」と聞くと父親は「半分」とだけ言った。