スライム
「綺麗にしておけば大丈夫だって言うよ」
…何を?
「綺麗にしておけば大丈夫なんだって」
だから何を?
「猫のゲロ」
ー
副流煙
あなたは副流煙ですか?
「違いますけど。」
私はそうなんです。
「なんだ。じゃあ、実は私もそうなんです」
ー
農場で豚を蹴る
スライム
「綺麗にしておけば大丈夫だって言うよ」
…何を?
「綺麗にしておけば大丈夫なんだって」
だから何を?
「猫のゲロ」
ー
副流煙
あなたは副流煙ですか?
「違いますけど。」
私はそうなんです。
「なんだ。じゃあ、実は私もそうなんです」
ー
農場で豚を蹴る
小さな卒塔婆のようなものを右手に持って、小さな木の柵の嵌め込まれた壁の前に立っている。
今から柵越しにこれを見知らぬ誰かに渡さなければならない。
これは元々弟が持っていたもので、回覧板のようなものらしいがあまり長く手元に置いておくと良くないという。それを聞いた私が弟から半ば強引にこれを預かってきたようだ。
壁の向こう側に何者かの気配を感じる。
私は、いつの間にか左手の中に現れた、読めない字の書かれた古く分厚い木簡のようなものを小さな卒塔婆と一緒に柵の前の小さなテーブルの上に置いた。
すると柵の間から手が伸びてきて、「これはいいものだ」みたいな事を言って木簡の上部を捻った。
すると蓋が開いた。木簡は水筒だったらしい。中身はワインのような発酵した飲料だった。
場面は連続しているが視点が変わり、ごく小規模な飲食店の一番隅の席のような場所で、ひどく血色の悪い中肉中背の冴えない男性が生肉の塊のようなものを食べながら木簡ワインを飲んでいる。
「美味しくて止まらない」といった独り言をブツブツと喋っていたが、やがて感極まったように泣き出した。
みるみるうちに目が腫れていき、腫れ上がった瞼の隙間から鬱血した舌が覗く。
さらに時間が経つとその舌に無数のできものが現れ、やがてそれは焦げ付いていった。
男は一切の痛みを感じていないようで、酒を飲み干すと両目の舌を引っ張って遊び始めた。
いつの間にか正気を失っていたらしい。
視点が戻り、私は柵の隙間からその一部始終を見ていたようだった。
この事を弟にLINEで伝えて怖がらせてやろうと思い、スマホを探すために目を覚ました。
工業地帯の海辺に立っており、目の前にダイオウイカの腐りかけた死骸が打ち上げられている。
私はなぜか小さなナイフを持っており、好奇心からその皮を切って中身を出してみる事にした。すると、体躯に対していやに小さくまとまった臓器が溢れ出てきた。
これは膨張した人間なのかもしれない。
そう考えて改めてダイオウイカの死骸を俯瞰すると、腐って剥げ落ちかけた頭皮のような部位と不揃いな歯列が見える。
人だと気付かずに遺体を損壊させてしまった場合でも私は罪に問われるのだろうかと疑問に思った。
いつの間にか海を泳いでいた。
ひどく曇っていて、空も海も濁った灰色と黒色をしている。
小学生の頃の友達に手を引かれて沖へ進む。足がつかず水がどんどん冷たくなる。
どこに行くの?大丈夫なの?と何度も確認するが友達は返事をせず、振り向きもしない。
足元に何か大きな生き物が泳いでいるのを感じる。
港のような場所?で大きな船の残骸を何人かの同年代の人々と共に探索していた。
その場にいた人たちは現実のバイトや仕事で出会った人や過去の同級生など様々で、その中に私の友達や特別親しい人は誰もいなかったが、ただ年甲斐も無く悪ふざけのような会を開いていたので興味半分で参加したのだろう。
仕事仲間の女性一人とバイト先にいた女性と私の三人で絵に関する話題で盛り上がり、同じ志を持つ人と話すのは楽しい事だったんだなと思った。
次第に探索の事を忘れて甲板の端に座り、三人で話し込んでいたところ、海の方から何かごく低いサイレンのような地鳴りのような音が響いた。
海の方を見ると海面が不自然に湧き立ち、大きな犬の形をした水の塊の群れが現れ、一斉にこちらへ迫って来た。
甲板は高い位置にあるから大丈夫だろうとたかを括っていたが、水の犬は想定以上のスピードで一心不乱にこちらへ駆け上がって来るとその場にいた人々に片っ端から体当たりをしてきた。
私と隣にいたバイト先の人は船の縁のような部分に叩き付けられ、仕事仲間の人は甲板から転落して行った。
水の犬は尚も海面から現れ続けている。
船から出て市街地へ逃げ込むも、水の犬は液体であるためあらゆる路地に入り込んでくる。
市街地には同年代の人々が先に逃げ込んでおり、皆公園の遊具や木に登ったりしてどうにか水の犬から逃れようとしていた。
私はバイト先の人と共に、壁に取り付けられたいくつかの室外機の上を渡り歩きながら様子を見ていた。
もっと高い場所へ逃げた方がいいだろうという事になり室外機から近くの木へ飛び移る。
その瞬間体の軽さに違和感を覚え、自分たちは既に最初の水の犬に巻き込まれて死んだのだと初めて気付いた。
バイト先の人と別れて街中を飛んで見て回る。
どうやら船の会に参加した人々は全員死んでしまったらしい。
市街地には人がおらず、この海辺の町にいるのは私達の幽霊と水の犬だけになってしまった。
なんとなくLINEを見て、明日友達と会う予定があった事を思い出した。
しかし返信ボタンがグレーアウトしており押せない。電話をかけようとしたが、ノイズが聞こえるばかりで上手く繋がらない。
私はひとまず家へ帰る事にした。
改札での支払いができず、仕方がないのでそのまま駅に進入した。
ホームへ降りる階段の途中で綺麗な夕焼けに気付き写真を撮る。通行人は皆私をすり抜けて行き、夕焼けには目もくれなかった。
この綺麗な夕焼けを誰かに見せる手段を今の私は持っていない。虚しさを感じ、死ぬとはこういうことかと実感を得た。
途端に家に帰る事が怖くなり、市街地まで引き返す。同年代の人々のうちの数人はまだ公園でたむろしていた。
ここが私の新しい居場所となるようだ。
友達から「明日待ち合わせ10時半な」とLINEが来たが、開かずにスマホの電源を切った。
何か大きな災害のような出来事があったらしい。
友人と話しながら何かの建物に入ろうとすると、エントランスに死んだ子象が横たわっていた。
椅子のような生き物が泣きながら子象の前足に触れていた。
「かわいいね」と言ってその場を去る。

数十年間放置されていた放射性塗料の廃工場内で猫が繁殖しては死ぬ事を繰り返しており、やがて放射性物質に耐性を持った特殊な個体が一匹生まれた。
その猫が殺処分されるというので、私は猫を無断で連れ出し、放棄された一軒家に共に隠れ住んだ。
電気の通っていない暗い家の中で、唯一猫だけが淡い青緑色の光を放っている。
これが私が見る最後の光になるのだろうと思うとより一層美しく見える。
ー
抽象化された駅のホームのような空間で、先天性の病気を持った双子が生まれた。
彼らは生まれてすぐ冷蔵保存されなければ鮮度を失ってしまうのだという。
しかしホームの空間には小さな冷蔵庫が一台あるのみだった。
結局、双子のうち片方は「半生」になってしまった。
こうなってしまうと、法律上彼らは双子ではなくなってしまう。
「生」と「半生」の双子は明日から赤の他人として別々の道を歩むことになるだろう。
ホームの空間もその事を深く嘆いている。